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樹木葬とは?メリット、デメリットどんな埋葬方法なのかをわかりやすく解説
近年お墓の形は多様化しており、樹木や草木を墓標とする樹木葬は新しいお墓として人気を集めています。そのため、樹木葬について「もっと詳しく知りたい」、「メリットだけなくデメリットも知っておきたい」という方も多いことでしょう。
この記事では、樹木葬について種類や埋葬方法、納骨方法の違いについて詳しく解説し、メリット・デメリット、費用の内訳も紹介します。
目次
樹木葬とは
「樹木葬」とは遺骨を埋葬した場所に一般的な墓石を設けずに、樹木や草花を墓標にしたお墓のことです。遺骨を埋葬して苗木を植えるケースや、墓地内にあるシンボルツリーの周辺を区画に分けて遺骨を埋葬するケースなどさまざまな方法があり、公営や民間の霊園、寺院などでも樹木葬が導入されています。
お墓に対する考え方は多様化しており、納骨堂や散骨といった一般的な墓石以外の選択肢も増えてきています。その中でも「樹木葬」は自然に還るという考えのお墓のスタイルであり、明るさや美しさも感じられ、費用も一般的なお墓よりも抑えられることから人気を集めています。
樹木葬の種類
樹木葬のなかでもさまざまな種類があります。自然の地形を活かした里山型とメンテナンスや整備がされた都市型の大きく2種類があります。
里山型
里山型は墓地として許可を得た山林に遺骨を埋葬する方法です。区画ごとに1本ずつ新たに樹木を植えるタイプと、自生している樹木の近くに埋葬するタイプがあります。樹木葬の種類のなかでも人工の構造物を使わない地形を活かした自然に近いスタイルで、自然を育てる自然保護の観点や環境面においても優れたタイプの樹木葬です。里山型は広大なスペースが必要なため、郊外にあるケースが多いのが特徴です。自然に近い魅力はあるものの、アクセスが不便になるという懸念はあります。
都市型(公園型、庭園型)
都市型は寺院や霊園の一角に設けられたスペースにシンボルツリーや草花を植えたタイプの樹木葬です。都市型のなかでもさらに公園型と庭園型に分けられます。公園型は芝生が張られたマウント状のスペースにシンボルツリーがある場合や区画ごとに植えるケースもあり、自然を残しつつ環境を整備したタイプです。庭園型はガーデン風に整理されており、美しい景観が特徴です。
樹木葬の埋葬方法の種類
樹木葬と一括りにしても遺骨の埋葬方法は、以下のように3つの種類があります。
個別埋葬
区画分けしたスペースが個別に設けられ、区画ごとに遺骨を埋葬できる方法です。区画内に墓石のかわりにシンボルツリーがあり、その区画内に遺骨を埋葬します。ほかの方との遺骨が混ざることもなく、お参りの際も対象が曖昧になることはありません。
そのほかの埋葬方法と比較すると料金は上がるものの、1区画内に個人だけでなく夫婦や家族と一緒に入ることも可能です。場合によってはシンボルツリーを自由に選べたりペットも一緒に入れたりします。
合祀埋葬
合祀埋葬は同じスペースに多数の方々の遺骨を埋葬する方法です。骨壺で埋葬はせず遺骨だけを取り出して埋葬するため、ほかの方々との遺骨と一緒に混ざります。一度埋葬すると個別に遺骨を後から取り出せないため、改葬や分骨の可能性があれば合祀埋葬は不向きです。しかし多くの方と一緒に埋葬されるため故人が寂しくないという利点もあり、お墓の継承者を必要とせず管理が楽、費用が安いといった点もメリットです。
集合埋葬
集合埋葬は、合祀埋葬と同じくひとつのスペースに多数の方の遺骨を埋葬する方法です。しかし遺骨が混ざらないように袋や壺などに入れたまま埋葬できるのが特徴です。
樹木葬の納骨方法の種類
寺院や霊園によって、故人の遺骨をどのようにして埋葬するかといった違いもあります。おもに以下のパターンがあります。
骨壺で埋葬する
遺骨を入れた骨壺を埋葬する方法です。個別埋葬であれば、骨壺のまま納骨できます。
直接埋葬する
遺骨を骨壺から出して遺骨だけを直接埋葬する方法や、袋に入れ替えて埋葬する方法があります。
遺骨を粉骨して埋葬する
遺骨を粒子状に細かく粉砕して埋葬する方法です。
樹木葬にかかる費用の内訳
種類や場所によってかかる費用は変動しますが、樹木葬にかかる費用相場は20〜80万円程度です。樹木葬の費用の内訳は主に以下のとおりです。
- 使用料
樹木葬の土地を使用する費用です。
- 苗木代
樹木葬のシンボルツリーとなる苗木の費用です。
- 骨壺代
専用の骨壺が必要になるケースもあります。
- 納骨費用
納骨にかかる費用です。
- プレート代・彫刻料
樹木葬の目印となるプレートとその彫刻にかかる費用です。
- 維持・管理費
個別埋葬の場合では年間で支払いが発生します。
樹木葬にするメリット
樹木葬にすることで以下のようなメリットがあります。
永代使用料や管理費用が一般的なお墓に比べて安い
一般的な墓石を建てるお墓の場合、数百万円単位の費用を必要とすることが多く、経済的な負担は大きいです。しかし、樹木葬の場合は高額な費用になりやすい墓石を建てないため、安価なタイプであれば10〜20万円ほどに費用を抑えられます。
樹木葬のタイプや場所によって費用は高くなりますが、一般的なお墓に比べて費用が安いことがメリットです。
宗教や宗派の制約がないケースが多い
樹木葬は宗教や宗派を問わないケースがほとんどで、仏教ではない宗教の方や無宗教の方でも埋葬できます。基本的には納骨式のような宗教上の作法やしきたりなどもありません。寺院にある樹木葬であっても、宗教や宗派を不問にしているケースもあります。
ただし場合によっては寺院の宗教や宗派である必要があったり宗派に沿った供養方法で埋葬したりするため、事前に確認しておきましょう。
永代供養になるケースが多いため承継者問題に悩まない
樹木葬は「死後は自然に還る」という考えを持った埋葬方法であるため、ほとんどのケースで永代供養となっています。一般的な墓石を建てるお墓の場合、基本的に故人の家族や親族が引き継いで管理する必要があるため、将来的に墓石を引き継ぐ承継者がいなくなることも考えられます。
一方で樹木葬の場合、樹木葬を霊園や墓地の管理者に任せることにあるため、子どもがいない場合や子どもに負担を掛けたくないという場合にも選択しやすい方法です。承継者がいないことや誰が管理するかといった問題に悩むことはありません。
樹木葬にするデメリット
樹木葬は一般的なお墓に比べるとメリットを感じられることも多いですが、反対にデメリットになり得ることもあります。
遺骨を再度取り出すことが難しい
樹木葬は自然に土に還るという考えから、遺骨はほかの方々と一箇所に混ぜ合わさり長い年月をかけて土に還っていきます。そのため、個別埋葬のように骨壺で埋葬するケースは除いて、再度遺骨を取り出すということができなくなります。
一般的なお墓の場合は、骨壺を取り出してお墓を引っ越すことも可能ですが、樹木葬では基本的にできないため慎重に検討しましょう。
お墓の継承はできない
樹木葬は永代供養を採用しているケースが多く、基本的に一代のみのお墓でありお墓の承継はできません。お墓の管理や法要などの負担を軽くできる選択肢ではありますが、一定期間を経過すると合祀されるため納骨の期間が短いと感じる可能性があります。
将来的に家族が増えて孫の代まで一緒に入りたいと考えても収容人数に制限があり、希望が叶わないこともあります。そのため、納骨できる期間や何人まで同じスペースに納骨できるかを確認しておくことも大切です。
墓石がないため一般的なお墓参とは異なる
一般的に墓石のあるお墓参りの場合は、墓石をきれいに掃除してお線香やロウソクを立てて、お花やお供えものをします。そして墓石に向かって手を合わせてお参りをします。
しかし、「合祀埋葬」や「集合埋葬」だと、墓標はなくお祈りする目印になるものがありません。個別にお供えできるスペースがないため、線香をあげたりお供えしたりできる祭壇が別に備わっているケースもありますが、お参りの対象が漠然としてしまい供養の実感が薄れると感じる可能性もあります。
樹木葬を選ぶ際に知っておくべきこと
樹木葬はメリット・デメリットもあるため、よく考えて選択する必要があります。また、樹木葬を決める前に知っておくべき内容を紹介します。
最終的には合祀される場合がある
樹木葬は個別埋葬であっても、埋葬の期間が過ぎれば合祀され永代供養となるケースが多いです。最終的な埋葬の方法を確認せずに契約をしてしまって後悔するケースもあります。すべての樹木葬が合祀されるわけではありませんが、遺骨の移動を望まない場合は合祀しない契約ができる樹木葬を探す必要があります。
家族や親族からの理解が得られない場合もある
樹木葬は新しいお墓のスタイルであるため、先祖から受け継いだお墓がある場合や一般的なお墓を希望する家族や親族がいる場合、理解されにくく反対されるケースもあります。
子どもたちに負担をかけまいとする親の気持ちと、子どもたちやそのほかの親族との意見が合わず、はじめからお墓を検討し直したり契約を解除したりするなど余計な労力を余儀なくされることもあります。樹木葬を選ぶ前にしっかりと家族でお墓に対する考えを共有しておくことが大切です。
粉骨をしなければならない場合もある
樹木葬の納骨方法でも紹介しましたが、粉骨しなければならないケースもある点に注意が必要です。とくに都心部ではスペースが限られているという理由から、粉骨が必須の条件となっていることもあります。故人に対して気が引ける方や粉骨したくないという方であれば、納骨方法について確認しておく必要があります。
樹木葬にする場合の一般的な流れ
樹木葬を選ぶ際の基本的な流れは以下のとおりです。
1.見学
お墓は自分が眠る場所ですが、お墓参りする家族のことも考えて必ず実際に見学しておきましょう。樹木葬の管理施設によっては、事前に見学したい旨を伝えておく必要があります。現地を見学してみて案内してくれる人や受け付けてくれる人がいれば、気になる点などを質問しておくとよいでしょう。
自分が気に入った場合でもアクセスが悪ければ、家族に負担をかけさせてしまうこともあるため、必ず家族にも相談してから決めることが大切です。可能な限り家族にも見学に付き添ってもらうことをおすすめします。
2.申し込み
樹木葬の見学を済ませたあとに家族にも賛成してもらえれば申し込みを行います。見学当日ではなく一旦持ち帰って、ゆっくり検討したうえで判断するのがポイントです。樹木葬にしたいけれど複数の候補があってどこにしようか悩む場合は、優先したい内容を書きだして整理すると検討しやすくなります。
申し込みを行って樹木葬の契約料を支払うと手続きが完了します。申し込み方法や料金、支払い方法などは樹木葬を管理する施設によって異なるため確認しましょう。
3.使用許可証の発行
契約料の入金を済ませたら管理者から契約者に、樹木葬の使用を許可する証明書が発行されます。使用許可証がないと実際に納骨ができず、再発行の手続きをとらなければいけないので大切に保管しておきましょう。
4.納骨
樹木葬の管理者と相談して納骨の日程を決めます。故人の火葬が終わると「埋葬許可証」が発行されますが、埋葬許可証がなければ遺骨があっても埋葬してもらえないため、納骨まで大切に所持しておきます。実際の納骨の方法は樹木葬を管理する寺院や霊園によっても異なります。
5.法要
基本的には宗教上の作法やしきたりはないケースがほとんどですが、納骨式などの法要を行う場合は、仏教の形式であれば僧侶の手配をおこないます。キリスト教の場合であれば神父や牧師に依頼して来てもらい法要を行います。
まとめ
これまで墓石を墓標にしたお墓が一般的でしたが、現在は「残される家族に負担をかけたくない」、「花や木々に囲まれた自然な地に眠りたい」、「安価に抑えたい」という理由から樹木葬を考える方も増えています。メリットだけでなくデメリットも把握したうえで、家族にも相談しながら最適なお墓を検討しましょう。